大学図書館員、副収入を考える

2023年12月13日水曜日

t f B! P L

はじめに

実に7年ぶりの更新です。少し前に、大変長かった学生生活を終え、最近は中年の大学図書館員(電子資料契約、RDM、ソフト活用のサポートと病院図書室運営全般などの担当)として、楽しい毎日を過ごしています。

しばらく団体活動や研究生活から離れて趣味と家族のために時間を使いたいのですが、定年退職後に週1、2回大学で非常勤講師として授業をしたいので、アカデミアに片足だけ入れるような生活をしたいと考えながら生きています。

しかし、どうにも商人気質なもので、時間に余裕が出てくると
「時間をお金にできないか?」ということも気になってきます。

そこで今回のテーマです。
対象はしっかりした「副業」ではなく、「副収入」(本業以外のあらゆる収入)です。投資などの図書館と関係ない話は触れません。
夢見がちな儲け話ではなく、体験や見聞きしたものも含めて現実的な話を書いてみます。

診療ガイドラインの文献検索


医学分野の場合、病気(疾患)についての症状や病態、標準治療についてまとめた「診療ガイドライン」というものが出版されます。(参考:Minds ガイドラインライブラリ https://minds.jcqhc.or.jp/
医学系の学会はそれぞれ何かしらのガイドラインを出版しているような気がするというくらい出版され、しかも数年おきに改訂版が出ます。1年で50冊くらいは新刊書として見ている気がします。

この診療ガイドラインはエビデンスに基づいてまとめられるので、きっちり作ろうとすると、検索に詳しい人間の力が必要となります。そのため、学会側から専門家に代行検索依頼がかけられたりするのです。
ここで依頼先となるのは、JMLA(医学図書館協会)・JLA(日本図書館協会)といった図書館団体や、国際医学情報センター(IMIC)などの業者です。まれに個人が引き受けていることもあります。(※ガイドラインを評価するプロジェクトの手伝いをしている関係でいろいろ話を聞くところでは、業者さんは価格面で折り合いがつかず、図書館団体は処理能力のキャパシティの問題があり、学会側が依頼をしたくてもできないことも多いとか。ブルーオーシャンと言えなくもない。)

依頼を引き受けると、PubMed、医中誌Web、Cochrane Libraryなんかで検索することになります。図書館団体が引き受けたパターンで仕事をしたことがありますが、慣れれば処理速度は上がるものの、検索するトピック(クリニカルクエスチョン/CQ)によってかかる時間が変わるため時給に換算した場合の損得は計算しにくいといえます。また、どこがどのくらいのお金を手にしているのか不明なので、末端の作業者が手にする価格について、ここでは触れません。ちょっとしたアルバイトくらいはもらえます。ただ現状では、引き受けるまでにどうしてもツテが必要なことが多いようで、それゆえ多くの図書館員にとっても身近ではなさそうです。改善案を団体に出してみたい気持ちと、言い出したら実現性にかかわらず仕事がまわってきて大変だから静観しようという気持ちが半々です。

「代行検索」としては、情報科学技術協会の飲み会で、特許系でもそういうビジネスが行われているような話を聞きましたが、残念ながら経験したことがないため相場などはわかりません。対企業の仕事だし、関連特許を網羅できなかった場合の損失が大きいだろうから、いただける額も多そうですけど、どうなんでしょうね。気になります。

大学の司書課程で非常勤


昔やっていたころは、1回の授業で1.2万円くらいでした。これは大学にもよるし、職位(教授、准教授などの肩書)にもよります。某有名私大の経済系教授が定年退職後に同大で非常勤として授業をやった場合、1回4万円だったそうです。「1コマ1万円じゃ安すぎるよ!」と言ってました。リアクションに困りましたが。それだけ価値がある授業ということなのでしょうね。
授業資料が回数分できあがれば次回以降手間も減って、長くやればコスパが良くなる、塾講師や家庭教師と同じような仕組みの仕事です。空きがないと働く機会はなく、機会があっても公募だったりするし、ツテがあると話が早い場合もあります。
夏休みとか冬休みに3日間集中で通信課程のスクーリングとか、毎週土曜に副業としてやっている方もいます。元上司は週一日半休とって、他大学で毎週教えていました。自分が目指す場合もこのパターンかなと思っています。
非常勤教員の確保に苦労するという話はよく耳に入るのですが、実態はあまりわかりません。そもそも地方だとなかなか人がいなさそう、という点も気になります。今後どうなっていくのかも含めて興味深いところです。

謝金

[講師としての謝金]
企業や団体のイベントで講師の役割を依頼される場合、謝金があったりします。ボランティア的な位置づけのこともあるようですし、金額や相場はよくわかりません。お車代+αみたいなものですかね。
図書館で導入しているシステムやサービスのベンダーが、サービスを広めるためのイベントを行う場合によく発生するお仕事という印象です。図書館組織内のトップ近辺とか、該当システムのメイン担当とかでないと務める機会はなかなか回ってこなさそうです。
先輩や同僚はいろいろやっていますが、自分では経験したことがないものです。でもやりたいかと言われると、ちょっと微妙です。

[査読の謝金]
先日、縁のある学会から投稿原稿の査読依頼がありました。非会員には謝金が支払われるとのことで、それはそれは丁寧な査読を心がけました。時給に換算するとばっちり最低賃金を下回りますが、自分では良い仕事をしたつもりです。誰を査読者にするかは、学会誌の編集委員などが都度判断するものですし、安定した収入源になるものではありませんが、貢献度と相まって心は豊かになります。

文献複写

ILL業務をしていると、どこの大学からも提供してもらえない文献を取り寄せなきゃいけないことがあります。そのとき調達候補になるのはいくつかの業者です。ではその業者はどこから文献を入手してくるのでしょう?その答えについて、考えたことがない図書館員も多いのではないでしょうか。
いくつかパターンがあると思いますが、その一つに「図書館の中に業者が常駐している」というパターンがあります。建物の権利を持つ組織にそれなりのお金を払って場所を用意してもらい、館内資料をスキャンし、著作権料の処理をして届けることにより収益を得るというスタイルが存在するのです。
せっかく図書館で働いているし、個人で勤務時間外に複写事業やってみたらどうかと考えはしたのですが、やめました。よほどいろんなものを効率化しないと割に合わなそうなです。
そんなわけで、もしそのような業者が勤務先に常駐していれば、勤務時間外にお手伝いと称してアルバイトとして雇ってもらえないか交渉するのもありかなと思うわけです。交通費0円(本業用の定期券が支給されているため)、大学側組織との橋渡し役を兼任するという前提を切り札にしつつ、時給1250円くらいのアルバイトとでどうか、というラインでの交渉ができそうな気がしています。成功するかは知らない。

その他

[賞金]
残念ながら副賞でお金がつくものを受賞したことがありませんが、団体が主催しているような賞(例えば研究奨励賞とか)は、少しまとまったお金がもらえることもあるようです。もちろん団体や賞によるでしょうけど。能力の有無にかかわらず努力が実るかは未知なので、稼ぐ目的なら確実にやめたほうがいいですね。そういえば受賞した人の研究相談にのっていて、分け前としてビールをおごってもらうことになっていたことを思い出した。飲み会解禁のご時世だし精算させてもらわなくちゃ。

[企業のアルバイト]
その昔、学術雑誌出版社の中で立ち上がったプロジェクトのメンバーとして在宅可のアルバイト(契約職員みたいな感じ)をしていたことがあります。他でフルタイムで働いていたので、兼業という形でした。時給は2,000円越えでなかなか良かったです。
景気がどうなろうとも、お金はあるところにはあるんだろうと思います。稼ぐならそこを狙いたいものです。

おわりに

さて、書き出してみると、環境やツテに恵まれないと機会がないことも多いようです。こればかりは運にもよるものですが、機会だけでもいろいろあると思えれば、より世界は明るく見えますね。

あと副収入を考えた中で感じるのは、「教育機関で働く利点の大きさ」です。
大学だと教育機関向けのOffice・Google系のサービスを利用できるようにしてくれていたりもしますし、業務を通して経験を積むこともできるので、もし個人事業主をやろうと思ったときに、経験できているサービスの幅が少しだけ広いように感じます。企業だと、使わないサービスは導入をしてもらえない場合もあるでしょうし導入コストが高いでしょうからね。学内の教員によるセミナーも聞けたりしますし、業務をこなしてスキルアップしつつ、ついでに副収入に転用していくことも可能でしょう(さすがに業務外では別ライセンスでのソフト購入を考える場合もありますが)。

手段はいろいろ思いついても、動かなきゃお金は生まれません。さてどうやって稼いでいきましょうかねえ。

広告

自己紹介

自分の写真
ある日突然図書館司書資格関係の科目を教えることになり、司書と司書教諭の必要科目の大半を担当していました。次に図書館関連の道具を販売したり建築・改築をする仕事に転職し、図書館の機械化部門で図書館システムやらIC関係の仕事をしました。現在は大学図書館の司書(大学病院図書室、電子資料契約、RDM等の担当)として勤務。 ブログは教員のころに始めたものなので、当時からするとコンセプトは大きくずれているけど、まあよしでしょう。 博士(図書館情報学)。

ページビューの合計

このブログを検索

人気の投稿

ブクログ

QooQ