ちょっと前の話になるけど、パチンコ屋が出店されるのを阻止すべく、
自治体が異例の速さで図書館を建てようとしたとかで問題になってました。
これは日経新聞のウェブ版ですが、
パチンコ店予定地隣に図書館 東京地裁、国分寺市に賠償命令
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1904I_Z10C13A7CC1000/
という記事なんかが具体例です。
記事には"風営法などでは図書館の敷地から50メートル未満の範囲でのパチンコ店経営が禁じられている"などと書かれておりまして、
「図書館にそんな使い方があったか…!」
と、それはもう大きな衝撃を受けました。
結果的にうまくいってないけれど、とりあえず知識の使い方に驚かされたというか。
これはバリアなのか!? 大人のバリアは法律ではるのか! って。
まあ振り返ってみると、
教科書では図書館に直接的に関係する法律とその解説が中心だし
(教える時間が足りないからしかたないね)
他の法律でどう扱われているか(ネタとして)調べたこともなかったので
やっておこうと思います。
というわけで今回の方針。
e-gov(電子政府総合窓口)の法令データ索引システム
(
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/strsearch.cgi)で
なんとなく「図書館」と検索すると146件引っかかります。
そのうち司書課程のどの教科書にも必ず載ってそうな重要法令(経営的、建築的に重要な法など)、驚きがない法令は省いてリストを作ってみました。
並びは個人的に面白いと思った順です。あしからず。
基本的には法令をクリックすると、コメント部分が開くようにしてみましたが
風営法の部分だけは最初から開きっぱなしにしてあります。
____
風営法
今回いろいろ興味を持った発端の法律。
「
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」が正式名称で、「風適法」とも言ったりする。
図書館の文字が出てくるところを探すと、1箇所だけみつかります。
第二十八条第1項 (店舗型性風俗特殊営業の禁止区域等) で
店舗型性風俗特殊営業の場合、官公庁施設、学校、
図書館、児童福祉施設その他都道府県の条例で
定めたものの周囲200メートルは禁止区域とされていることがわかりました。
(それぞれの施設は別の法律で範囲が定義されている。たとえば図書館であれば図書館法の第二条1項が定義。)
そして同第3項を読むと、先に届出を出している店舗には適用されない、
つまり
図書館を後から建ててどかせることはできない様子。
ところがここで疑問に思うのは、
パチンコ屋は「店舗型性風俗特殊営業」に含まれるのかということです。
わきゃないよね、風俗営業だが性風俗じゃないもの。
そこでD1-Law.comというデータベースを使って詳細を調べてみたところ、
「
平成25年7月19日/東京地方裁判所/民事第6部/判決/平成20年(ワ)25098号」という判例を見つけました。これが問題のあれです。
これを読むと、
東京都の風営法施行条例施行規則では、
図書館の敷地からの距離が50メートル未満の区域内は公安委員会が風俗営業許可を出さない、
という事が根拠になっているようです。
そんなわけで、東京都の場合は図書館の50メートル未満の区域は風営バリアがあると。
なんとなく調べた感じだと他の地域はバリアの範囲が異なりますし、
これは掘り下げ甲斐がありそうなテーマです。
今年あたり卒論で書いている学生がいるに違いない。
参考:リンク先は東京都の総務部文書課によるもの
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例
(http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/ag10122141.html)
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の施行に関する規則
(http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012215001.html)
へき地教育振興法施行規則
「へき地教育振興法」という、へき地における教育水準の向上(教育の機会均等)を目的とした法律があります。
その中で出てくる[へき地学校]とは、交通条件及び自然的、経済的、文化的諸条件に恵まれない山間地、離島その他の地域の学校を指すらしいのだけれど、
[へき地]の度合いを測るために基準点や調整点の仕組みを設けて合算し、
最終的な点数によって級を決め、それに応じたへき地手当が出るようになっているようです。
計算方法はややこしすぎてあまりきちんと読んでないけど、
調整点を算出する場合に、
学校から図書館(図書館法第二条の図書館)までの最短距離が絡んできます。
へき地の図書館って蔵書とかどの程度整備できるんだろう、という質的な疑問はさておき、
存在するか否かはとても重要なようです。
待てよ、そうなると手当が減るから図書館は建てたくないって自治体もありうるのか…?
身体障害者社会参加支援施設の設備及び運営に関する基準
よく点字図書館の設置根拠として「身体障害者福祉法」が挙げられているけれど、
この基準の三十五条には点字図書館の設備の基準が、
そして三十八条には点字図書館職員の配置の基準が書かれています。
他の図書館関係の法令では見かけない、
聴読室、発送室という設備や、
点字指導員、校正員又は音声訳指導員という職員の存在などはなかなか新鮮です。
激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律
激甚災害時の特別な助成措置についての法律。
第十六条第1項 (公立社会教育施設災害復旧事業に対する補助)の部分で
国が激甚災害を受けた公立の公民館、図書館、体育館その他の社会教育に関する施設の復旧予算を補助できることが書かれています。(実際はもっと細かく書いてありますが。)
第十七条 私立学校施設災害復旧事業に対する補助、では私立学校の場合も定められています。
あと、
豪雪に際して地方公共団体が行なう公共の施設の除雪事業に要する費用の補助に関する特別措置法、同施行令を見ると、
国は地方公共団体の
学校や社会教育施設などが豪雪に見舞われた場合の雪下ろし費用を一部負担することができるらしい。
わざわざ法整備をするってことは
雪下ろし費用ってばかにならないくらいかかるんだろうなぁ…。
鉱業法
仕事柄なじみはないけど、鉱物資源の合理的な開発や採掘に関して定めたのがこの法律。
その中の第六十四条(掘採の制限)の第1項で、
"鉱業権者は、鉄道、軌道、道路、水道、運河、港湾、(中略)、墓地、学校、病院、図書館及びその他の公共の用に供する施設並びに建物の地表地下とも五十メートル以内の場所において鉱物を掘採するには、(中略)管理庁又は管理人の承諾を得なければならない。(後略)"
と書かれているので、
許可なく図書館の地表および地下50メートル以内が採掘現場になることはないらしい。
ただ、(後略)の部分には「正当な理由なしに承諾は拒めない」ということも書いてあるので、
どこまでが正当な理由になるのか興味は尽きないところです。
同じような扱いで図書館がでてくる法律に採石法という採石に関する法律もあるけど、
その三十五条によると、
採石業者は廃土又は廃石の捨場の設置を目的として
鉄道やら(中略)墓地やら図書館の土地を使用してはいけないそうな。
常識的に考えればそうだよなぁ、とは思うものの法律にはきちんと書いてあるんだね。
公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律施行令
木材の利用促進と環境への配慮を謳った
「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の第二条1項にでてくる
「公共建築物」の具体例の1つとして登場。
こんな感じで。
一 学校
二 老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類する社会福祉施設
三 病院又は診療所
四 体育館、水泳場その他これらに類する運動施設
五 図書館、青年の家その他これらに類する社会教育施設
六 車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場を構成する建築物で旅客の乗降又は待合いの用に供するもの
七 高速道路(高速道路株式会社法(平成十六年法律第九十九号)第二条第二項に規定する高速道路をいう。)の通行者又は利用者の利便に供するための休憩所
社会教育施設となると、法体系上「博物館」と同じくくりにされがちな図書館だが、
意外にも博物館は例示されていないのでした。似すぎてるのか?
そういえば法令で「青年の家」って文言は珍しいんじゃないか…?
法律的な定義ってあるのか…?
まあ、とりあえず、積極的に木造の図書館建てようぜ!!
広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律施行令
「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律」の(認定事業者による都市計画の決定等の提案)第十六条における提案可能な施設として以下のようなものが挙げられています。
一 道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
二 公園、緑地、広場その他の公共空地
三 水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、ごみ焼却場その他の供給施設又は処理施設
四 河川、運河その他の水路
五 学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設
六 病院、保育所その他の医療施設又は社会福祉施設
七 防水、防砂又は防潮の施設
今回は教育文化施設とされていますな。
法律によって図書館の扱いはちょっとずつ違うので、地味に勉強になります。
文化芸術振興基本法
第二十六条に、
美術館、博物館、図書館等の充実を図るため、国が必要な施策を講ずる、
という内容のことが書いてある。
がんばれ日本国。がんばれ文化施設。
それにしても、
誤解しがちな名前の文字・活字文化振興法と比べるとやや縁遠い感じがあるな…。
(文字・活字~の方は、法律内でかなりの回数「図書館」という語が出てくるのです)
高等専門学校設置基準・短期大学設置基準・大学通信教育設置基準
大学設置基準と比べると、数の少なさからかマイナーな印象がする基準たち。
実は比べてみると少しずつ異なっていて
「高等専門学校設置基準」の場合、
施設として図書館を置くという話だけではなく、図書館を中心に系統的に資料を集めろとか、
機能を発揮するための職員をおけとか、
研究ができるようにレファレンスルームとか書庫とか整理室を備えよと書かれているんだけれど、
「大学設置基準」「短期大学設置基準」の場合、
上記に加えて、他の大学や短期大学等との協力につとめよ、というのが追加されます。
そして「大学通信教育設置基準」では、
校舎の施設として、"図書館の閲覧室には、通信教育を受ける学生の利用に支障のないよう相当数の座席を備えるものとする。"(第十条第4項)と書いてあるだけだけだったりするのです。
4年制大学が通信課程も認可されている場合は特に問題なさそうだけど、
通信教育だけの所はうまく基準を満たしているのかどうか気になります。
そして高専の図書館などでは
図書館同士が連携協力体制をとる根拠はもってないようにも見えますね。
高専の図書館って大学よりも学校図書館に近い存在かと思っていたけど、
学校図書館法にもある他の図書館との協力みたいな文言が見当たらず、
微妙に浮いた存在に見えた、というのはささやかな新発見です。
まあ、他の館種からは協力相手と思われているんじゃないかと思うので、
そんなに大きな問題にはならない気もするけれど。
液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則
施行規則第八十六条において、
「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」第三十八条の三で定められた
液化石油ガス設備工事の届出をしなければならない者の一つとして図書館が挙げられています。
具体例はこんな感じなのだけど、
一 劇場、映画館、演芸場、公会堂その他これらに類する施設
二 キャバレー、ナイトクラブ、遊技場その他これらに類する施設
三 貸席及び料理飲食店
四 百貨店及びマーケット
五 旅館、ホテル、寄宿舎及び共同住宅
六 病院、診療所及び助産所
七 小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学、盲学校、ろう学校、養護学校、幼稚園及び各種学校
八 図書館、博物館及び美術館
九 公衆浴場
十 駅及び船舶又は航空機の発着場(旅客の乗降又は待合いの用に供する建築物に限る。)
十一 神社、寺院、教会その他これらに類する施設
十二 床面積の合計が千平方メートル以上である事務所(前各号に掲げるものに該当するものを除く。)
キャバレー、ナイトクラブと同列に図書館が並ぶ稀有な例だと思うとおもしろい?
自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律
自転車環境を良好にするための法律。
第五条第3項の中で、
周辺の土地利用状況も考えつつ自転車等駐車場を設置するように努めなければならない、と書かれている。
図書館の他にも、官公署、学校、公会堂等公益的施設、
百貨店、スーパーマーケット、銀行、遊技場等自転車等の大量の駐車需要を生じさせる施設、
が挙げられているけれど、
この法律あんまり知られてなさそうな気もするなぁ…。どうなんだろう…。
こうして並べてみると、図書館と社会の関係が少し違った側面から感じられます。
法律に関しては『図書館六法』や『図書館法規基準総覧』なんて資料もありますから
そのあたりの資料を見ればもう少し体系的に学べるかもしれません。
なにせ今回は「図書館」という語を含むもの、その中でも一部に触れただけですからね。
いつ役に立たせればいいのかわからない知識だけど、
これが教養ってやつですよ!(使いどころがまったくわからないので言い訳をしてみた)
0 件のコメント:
コメントを投稿