2011年11月14日月曜日

自費出版図書館へ取材に

もう1カ月くらい経ってしまいましたが、
ちょっとした興味から「自費出版図書館」さんへお邪魔してきました。
サイトはこちら

久しぶりの取材活動です。


以前大学の図書館で自費出版本を発見した際、
それまで目をむけたことがなかったことに気付きいたのが
取材交渉のきっかけです。
(その時のエントリ=図書館のわき道:『図書館の敵』


「自費出版編集者フォーラム JEF」というサイトの
"本づくりのいろは 自費出版書の献本を受けつける施設"などを見ると、
自費出版資料を集める施設はいろいろあるようなのですが、

今回は特に自費出版に特化した施設として、
自費出版図書館さんに取材をお願いするに至りました。


図書館業界のニッチをせめることはこのブログの目的の一つですしね。


どのような図書館なのかは名前から想像できる部分もあるでしょうが、
まずはサービスも含めて基本的なことをいくつか書いておきましょう。


  • 月・水・金曜日の12:00-17:00に開館していて、入館無料

  • 蔵書は25000冊程度

  • 職員数は2人

  • 以前は資料の郵便貸出もやっていたが、現在は館内の閲覧のみ




しかし僕のような人間にとって気になるのは「公立図書館と異なるのはどのような点か」です。

扱う資料が専門的であるということは、
資料の収集方法や蔵書構成、資料組織・管理面、サービスなどについて
ごく普通の公立図書館とは異なっている可能性が高くなるはずだと思っておりますからね。

今回もそのあたりを中心にいろいろ見たり聞いたりしてきました。


資料の収集方法について
基本的に自治体や個人から送られてくる資料を受け入れているとのこと。
受入基準などは設けていないため、基準による受入拒否もしていない。
対価を払ったりすることもないそうな。

自費出版に強い会社としては、
新風舎・文芸社・碧天舎などがあったが
(そのうち二社はもうない。調べると怪しげな話がいっぱい。)
そのあたりの資料は国立国会図書館へ大量に納本する割に、
自費出版図書館へははあまり入ってきてないらしい。

それと最近は地方から送られてくる自費出版本が多い感があるとのこと。


商業出版物の購入を軸とする図書館とは違いますね。

あ、別ルートで重複する資料が入ってくることがあるのか確認しても面白かったですね。
思いつくのが遅かったな…。


蔵書構成について
2005年3月に、当時の理事長であった伊藤晋氏が同図書館の蔵書についてまとめた『データでさぐる自費出版のすがた ―自費出版書は独自の文化財―』という資料を頂きました。

この資料から気になるところを抜粋してみると、


  • 調査時の蔵書は21,274点

  • 文芸書が約47%で一番多く、次いで戦争体験・自分史などの個人体験が約20%、遺稿追悼・宗教が約11%、歴史が約6%、研究書が約6%、教育・趣味が約5%、美術・芸能が4.4%、資料・一般書が1.5%

  • 2001年以降、年々文芸書の比率が上がっていた

  • 個人体験というジャンルの中では、自分史が約41%・戦争体験が約26%で大部分を占める


  • 著者の平均年齢は62.9歳。60歳の著者が最多、次いで多いのが70歳。年齢を横軸、所蔵点数を縦軸にプロットすると、60代あたりが山頂になる山ができる。ちなみに、ジャンルを[自分史]に限ると70歳あたりが平均年齢になる。(もっとも、年齢が不明だった資料が約44%もあるようですが…。)

  • 性別比は、男性が61.1%、女性が25.1%、その他(共著・団体・不明)が13.8%。

  • 著者の住所として最も多いのは東京で、30%弱。関東在住者を合計すると50%を少し超える割合となる。(著者の住所が判明した資料は91%程度)


  • ※2005年当時のデータで、その後組織の改編等もあるため現状を表しているとは言えないところに注意。


図書館の蔵書統計として著者の年齢や性別の表・グラフを見たのは初めてかもしれないです。

しかもそれがコレクションの全体像をつかむために
とても参考になるというパターンも初めてな気がします。新鮮です。

戦争体験の資料もけっこうあるものの、書き手が増えるとは考えにくいため、
今後の比率は変わるかもしれないとのこと。なるほど。

出版地の分布については
比率だけでなく各都道府県の人口で標準化したらもっと面白そうかも。

あと、年齢分布を見ると定年退職者の活動の一つとも考えられますが、
団塊の世代は個々人の考え方の差が大きいのか、
世代的な人数の割には自費出版資料が少ないように感じるという意見もいただいています。


資料組織化・管理面
『データでさぐる自費出版のすがた ―自費出版書は独自の文化財―』では
ちょっと特殊な独自の分類体系によって資料を分けています。

一番大雑把な分類として"ジャンル"があり、それを細分化するために"第一分類"があり、
さらにそれらを細分化する"第二分類"があり、またそれらを細分化する"第三分類"があるという
階層構造です。


"ジャンル"と"第一分類"だけ下記のような形で書いておきましょう。


    _ _ _ _
    例:
    <ジャンル>
  • ジャンルの中の第一分類1つ目、同2つ目、同3つ目…

  • _ _ _ _

    <個人体験>
  • 戦争体験、自分史、伝記、旅行記、滞在記、闘病記、障害・福祉、トラブル


  • <歴史>
  • 世界史、日本史、県史・市史、地方史、郷土史話、聞き書き、企業・産業史、店史、校史、神社仏閣史、組織史


  • <文芸>
  • 小説、随筆・雑記、詩集、句集、歌集、川柳、…


  • <美術・芸能>
  • 写真集、画集・画論、芸能、音楽…


  • <研究書>
  • 国語・国文学、外国文学、医学、数学、哲学・人生論、政治、経済、…


  • <教育・趣味>
  • 教育、自然観察、茶道、華道、スポーツ、登山、家庭生活、…


  • <遺稿追悼・宗教>
  • 遺稿・追悼集、ビジネス、宗教


  • <資料・一般書>
  • 自費出版資料、自分史資料、一般書



んー  一番ぐっときたのは「店史」かな。
他の図書館分類では見かけなさそう。分類に詳しくないけど。


なかなか興味深い分類体系ですが、
現在は図書館的な分類法(NDCの第一次区分表/類目表のレベル)によって並べられておりました。
そっちの方が探しやすいのだそうで。
特殊な分類の方が面白いからちょっと残念です。

自費出版物などは
MARC(大雑把にいうと検索・管理用に使う資料のデータ。)などが
あるとは限らない資料ばかりなわけで、分類やら登録が大変。

そもそも商業出版物と違って
書誌事項(タイトルとか著者とかのデータ)がきちんと書かれているとも限らないし、
目録作成において通常の図書館より苦労するのは間違いなさそうです。

MARCが買える・ダウンロードできるということがいかに便利なことか、
それができない場合どれほど大変か、
図書館の関係者だったら想像がつくでしょうね…。


ちなみに、
図書館や情報系の資料があれば読んでみたかったので頑張って探したのですが、
詳細な分類記号が付与されていないのと、
ほとんどの資料はタイトルから内容を想像できないという実に悩ましい問題によって断念しました。難しすぎ。

これも資料の特殊性によって引き起こされる問題の一つでしょう。


力を入れていること、検討課題、その他
その他インタビューで伺ったことなどいろいろメモ。

  • "りらいぶサロン文庫"という、定年を迎えた方のサロンとして役立つ資料を揃えたコーナーがある。ここには商業出版物も置いてあり、特に自費出版にはこだわっていない。

  • トラブルを起こした出版社があるので『自費出版 失敗しないための心得』というパンフレットを作り、自費出版の支援を行っている。

  • ニッチの発掘&評価を積極的に行うため書評に力を入れている。今年は震災の影響で1回になっているものの、通常は年4回程度『りらいぶジャーナル』を発行したり、ウェブサイトでレビューを行ったりしている。



  • 将来的には資料を電子化して館内での閲覧用として提供したい。

  • OPACへアクセスできない点を改善したい。総合目録への加入も興味はある。


  • 自費出版図書であっても出版社によってはISBNもつけるし、amazonで手に入る場合もある

  • 一般の方から所蔵の問い合わせがあったり、マスコミ関係者が戦争体験の資料を求めてやってくることもある

  • 特に類似の図書館と連携・協力はしていない。



今回の感想。

図書館で自費出版資料をどのように扱っているのかよくわかってないですが、
自費出版物が目を向けられにくいとしたら


  1. 資料の出版点数が少ないのであまり意識していない

  2. 資料の質に疑問を持たれている

  3. 自費出版の編集者も商業出版物ほど質にこだわっていなさそうだし、
    著者も大部数で多くの人の目につかせることより、
    記録に残すこと・出版することそのものを重視している?
  4. メジャーな流通経路に乗らない資料のため、存在していることが分かりにくい。

  5. 図書館は商業出版物の対応だけでいっぱいいっぱい



こんなところかと想像しております。あくまで想像ですが。


資料組織・管理面のところでも書きましたが、
取り扱うためにマンパワーがけっこう持っていかれそうな印象もありますし、
小さな図書館だとスペース的にもきついんじゃないだろうか…。

そんなわけで想像に想像を重ねると、

図書館では
”希少な資料ではあるが貴重な資料とまでは言い切れず、パフォーマンスを考えると扱いにくい”
とされているのではないか、という予想。

当たっているかどうかまったくわかりませんが。


図書館司書の資格を持っていれば、
「知的・文化的な記録物を保管するのも図書館の大切な仕事だ」
なんて話は授業でやっているだろうし、
少なくとも僕が今住んでいる自治体の図書館では
地域資料(郷土史や地域にゆかりのある人が書いたもの)の収集はしっかりやっている。

それに扱いにくかったとしても
公立図書館的が「地域密着」を掲げる場合や、
大学図書館的が「特定のジャンルを網羅すること」を掲げる場合には
関わってくる資料だとも思いますしね。

どうなんだろう。


とりあえず
著者にとっては、著作権による金銭的な保護より
多くの人に見てもらうことを希望しそうな資料であるため、
商業出版物より電子出版との相性が良さそうだし、今後の動向が気になるところです。
(過去のものについては孤児作品が壁になりそうな感はあるけど)


ただ、国立国会図書館が以前行った「納本制度60周年アンケートの結果」の、特に(5)あたりを見ると
出版社から図書館までの資料の流通経路を確保するためには課題が山積みかもしれませんね。

"納本対象となるような(立派な)出版物は作成していない、何が納本対象か分からなかった"
なんて意見があるというのは、流通事情以外の問題ですし。


今後どうなるかはわかりませんが、
電子出版周辺の話題としても、
図書館の話題としても動向に注目したいところです。

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