はじめに
前々回:人材募集に思うこと
面接に挑む姿勢やら履歴書の書き方なんかを拝見し、大変勉強になったので、今回は大学図書館の司書職を目指す人の履歴書と面接について書いてみます。戦略面でもいろいろ思うところはあるので、役に立つ人もきっといるはず。
前提条件
今回の前提は以下の通りです。- 私立大学図書館、正規司書職、公募
- 図書館外への異動がない職場
- 現場レベルでの判断
- 新卒、第2新卒あたりが中心
- あくまで個人の感想です
図書館といっても公共や学校や国立大学は大きく異なるし、私立大学でも風土によっていろいろ異なるだろうし、図書館業務を知らない人事とか役員とかが最終判断する際はそもそも基準が違うようです。
募集枠が若干名(実質1枠とか)だと熾烈な倍率の狭き門になりますので「1位通過を目指す」が基本戦略となります。ただ、他の候補者の仕上がり具合とか、その時々のニーズとか、面接担当者の好みとか、対策のしようもない問題も数多く絡むため、最終的な採用は運と縁と思って割り切るしかありません。それでも成功率を上げたい人にとって、役立てば良いなと考えています。
魅力を感じたこと と 気をつけたほうが良さそうなこと
実際にいろいろ拝見して、面接や履歴書について魅力的だと映ったことと、気をつけたほうが良さそうに感じたことを分けて書きます。魅力を感じたこと
サービス面以外への貢献が見える
以前も書いた通り多くの応募者にとって、大学図書館の業務は全貌が見えていないのだろうと感じました。特に履歴書からは、「図書館=利用者サービス」 という、サービスを受けた経験から連想した図書館像が書かれていることが多いと感じました。 別に間違ってはいませんが、業務の全体像が見えていそうな人の方が、入職したあとのギャップが少なそうで、離職リスクが低く感じます。正職員となると自分のやりたい業務だけ定年までずっと続けられるわけではありません。長く働くならいろいろな方向の業務を経験することになるでしょうから、いろいろな角度からの適性を見られるというのは意識しても良いと思います。NACSIS-CATや他のシステムの仕様を理解できているとか、大学院で研究経験があるとか、書評を書くのが上手とかも魅力ですね。
ただ、他大学で非常勤の司書経験があっても、なぜかそれが期待につながらない場合もあります。そこについては後述です。
図書館関係に強い課程を卒業している
特に筑波大があてはまるけど、大学入試の偏差値的な話ではなく、カリキュラムを考えた場合に、司書資格取得のための必須科目以外に、知っておけば図書館でも役立つかもしれない周辺的な知識(情報学の基礎、プログラミングなど)も学んでいる事に期待感があります。大学図書館でも図書館システムのリプレイスは定期的にありますし、理論としての検索やデータベースの基本的な仕組みがわかることは魅力的です。日常的にいろんな分析もする必要があったりするので情報処理経験も実務上の強みとなります。もう何年かすると一般的にデータサイエンス教育を受けた世代が育ってきて少し差が縮まるかもしれないけど、どうなるでしょうね。
結局のところ本人がどの程度できるかが重要なので、学歴がそれほど重視されるものでもないわけですが、書類選考上の期待感は確かにあります。
事前に調べたデータに基づき気になる点を質問する
「公開されている年報を読みましたが…」という前置きから始まる質問をくれた方は、やはり事前によく調べていて頼もしい感じがありました。きっちり調べて検討した上で応募してきてくれたことが伝わります。入職後のミスマッチも少なそうです。また、戦略を立てられるであろうこと、調査して考えることができそうな印象となります。履歴書に文言を書かなくても、行動で伝えるアピール方法があるということですね。小さな加点を積み重ねることも、成功率を上げるためには重要です。
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている、面接する側もまた見られている、そんな緊張感も良いものです。
その他
完全に好みの問題として、柔軟な思考ができる前向きな人が好きです。苦労人だともっと好きです。一緒に楽しく仕事できそうだから推しちゃう。気をつけた方が良いように感じた部分
志望動機や自己PRが薄い
案外、志望動機はよく見られている箇所です。面接の起点になるところなので、業務につながらない志望動機や自己PRだと、もしかして業務のことを何も知らない(調べてもいない)からあてずっぽうで書いてる?という空気が漂うこともある様子。動機はあまり気にしない方だけど、それにしたって「図書館ならどこでも良かったし、募集が出てたんで運良く受かったらいいなと思って応募しました」みたいな空気のままでは、"目指すは1位通過"が基本戦略になる世界での勝率は相対的に低くて当然です。悪いとかではなく、勝ち目が薄い。熱意が薄くても良いのは、それと引き換えになるほどの魅力を持っている場合に限ることてしょう。とはいえ、他に特別良さそうな応募者がいなければ通るかもしれないし、所詮この世は運と縁。特に大学の理念を褒めるというパターンもときどきあるようです。もしかすると偉い人には好まれるのかもしれませんが、現場レベルの課題は業務をどうこなすかなので、方向性が違います。宗教法人に近いタイプの大学でもなければ得しなさそうですが、どうなんでしょうね。もし自分が面接指導する立場なら修正を提案します。
一貫性がない
夢だった図書館で働きたいです!と書いてある割に特別そちらに寄せる活動をしていないと、当然疑問は生まれます。夢とか言ってる割に行動が伴ってないな?という空気も漂っている気がしました。そして矛盾を感じるところは確実に「なにか事情でもあった?」と質問されることになるでしょう。それを待つのも戦術でしょうが、得をするかは謎です。本気度は文章上の表現の強さではなく、行動を伴ったエピソードでアピールするのが良いですね。私自身は夢や目標などないので、動機があって路線変更するのを珍しいこととも思いませが、不整合の理由は気になります。
また、公募での採用活動はいろんな人の日程調整やら意見の取りまとめやらでけっこう大変ですし、そもそも採用を行うことがなかなか承認されないような組織環境だと、簡単に辞められると困るので慎重になるのは仕方がないところもあります。
即戦力アピール
第二新卒くらいで非正規職員として図書館業務の経験がある方が図書館の実務経験をアピールするのはもちろん理解できます。図書館用語も通じることは多いでしょう。わかります。ただ、即戦力アピールされるとどうしても気になることが生まれます。非正規職員として勤務しながら他館の正職員としての雇用を目指したときに、同じ仕事をし続けるイメージで話しているようにみえるけど、それは本当に即戦力か?という疑問です。
指示を出す側の職員が何の業務しているのか話を聞いたことがあるか、それを聞いて正規と非正規の業務にどのような差があると捉えているか(学校図書館だと仕事に差がない場合が多そうだけど大学の場合はやや懐疑的)、どうすれば自身のステップアップにつながる能力を身に着けられると考えどんな努力をしたのか、などの疑問もセットになって浮かびます。そして面接(特に集団面接)は、それらを掘り下げる時間があるとは限らないのです。そうなるともったいないので、最低限上に書いたような疑問はきちんと解消した形で履歴書や面接の準備をすると良いと感じました。
まとめと対策
まとめてみるとありきたりな結論ですが、しっかり一貫した考えのもと丁寧に調べ、行動を起こしてきた人間が強い、ということになります。最善策は地力をつけることのようです。職場によりますので絶対ではないですが。大学図書館員らしい勉強がしたいとか有利な経験を作りたいなと思うなら、現職向けのものに足を突っ込んでしまうのが早い気がします。もし面接指導する立場なら例えば以下のような体験をしてみることもすすめます。わからない用語も飛び交うだろうけど、ちょっとずつでも理解すれば良い話ですし。
- 図書館総合展に足を運んで大学図書館員向けのフォーラムを見る
- JPCOARのサイトにある研修資料を見て、飛び交う単語と背景事情を理解する
- 千葉大学アカデミックリンクセンターALPSセミナーとかシンポジウムの動画を見て大学職員と教育について考える
- 最近だとライブラリー・スキーマの話とかも面白かったです(図書館の位置づけを再定義する話だから、小論文の問題にもなりやすそうだし、調べておくと良さそう)
あと、もし九州大学の研究データ管理(RDM)支援人材育成プログラムを受講した人がいたら、多くの大学で「すごい!」とは思われそうですね。
おわりに
かつて履歴書やら面接の戦略をこんなに考えたことはなかったです。自身のことでさえ。わが身に置き換えて、できるかと言われると耳が痛い。それでも頑張りたい人が、うまくここにたどり着き、役に立ててくれるなら嬉しいです。それもまた運ということで。あと、「選ばれる」ではなく「選ばせる」という強気な姿勢、これだけ可能性に満ち溢れた自分を選ばないなんてどうかしてますよ?というスタンスはあっても良いと思いました。その方が精神も健全に保てそうだし。
そんなに頑張って公募で戦いたくない とか 勝負は場外で決まる、という考えの方はコネ採用についても書いたのであわせてご覧ください。
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