【図書館員の夏休み自由課題】シークレットブックを作り、お金になるのか考えてみる

2024年9月5日木曜日

企画

t f B! P L

はじめに

気が付けば夏休みも終わりですね。
大人になっても毎日締め切りという名の宿題に追われる日々は続くのですが、
自由研究とか工作は、夏休みの時期に急にやりたくなったりします。必要ないのに。
(そういえばパピルスで手紙を書いたのも夏だった)

そんなわけで、今回は廃棄された資料を使ってシークレットブック作りを試し、
これをどうやって発展させられるか考えてみます。
4年前から考えていたけど、ようやく実行に移す時が来たのだ…!
ちなみにシークレットブックというのは、中をくりぬいて物を隠せるようにした本です。

参考:大事なものを隠しておく「秘密の本」の作り方 https://www.lifehacker.jp/article/161112_secret_book/ 

本を破壊することに心理的な抵抗があるものの、
廃棄図書が定期的に発生することを思えば、
お金を生む可能性を検討しても良いのではないだろうか。

資産管理対象から抹消して資料を廃棄する場合、
一般的には、
ご自由にお持ちくださいと書いて並べた後、
誰も持っていかなければ古紙回収業者に回すか、
欲しがるような施設に渡すか、
そのままゴミ捨て場に置かれるところでしょうから、
常々他に何かできないかなーと思っていたのです。

今回使う材料

既に廃棄された図書の中から、
できるだけ厚みがあり、なるべく心を傷めずにすむ、そんなものを探すことにし、
病院の診療報酬について解説された図書を回収してきました。

診療報酬自体が2年に1回改定するもので、旧版は史料にはなるかもしれないが資料として重要ではなくなります。
保管部署からの依頼で廃棄し、3年以上経過した(この企画に使おうと思っていたが忙しくてそれどころではなかった)ということもあり、対象としました。
厚みは約5cm、高さ(縦)は約25cm、奥行(背から小口)は約18㎝、
全盛期の電話帳みたいな大きさです。といっても若い人には通じない例えか…。

あと製本用のノリとカッターも用意しました。
その昔閉校になった学校の図書室で使われていたノリの残りをもらったものです。
いったい何年前のものなのか全くの謎ですが、まだ使えました。 

作ってみる

くりぬく部分の大きさは、一般的な家の鍵が入るくらいと考えて、
縦5cm×横3cm×深さ1cmくらいあれば十分かとは思ったのですが、
自由課題だしもう少し大きくしてみることにしました。
縦横それぞれの長さを四等分して、1ページを16分割したときの真ん中の4区画をくり抜きます。
縦12cm×横9cm×深さ2cmくらいの穴です。

実は用意した材料の写真や、以下の各作業工程を撮影しているのですが、
万が一にも職場に迷惑のかかる事態にならないよう
掲載は控えることにしました。盛り上がりには欠けるのですが…。
対面でリクエストされたらお見せすることにします。

そして切り続けること約1.5時間、ずいぶん断面の汚いものができあがりました。
カッターに定規をあてて何度もスライドしてみたわけですが、
不器用なせいか、そんなにきれいに同じ場所をカッターで切り続けられないとか、
深さを増すごとにカッターで角を処理するのが難しくなるとか、
抑える方の手を紙の上に置いて作業をすると勢いで破れることがあるとか、
やってみてわかる発見だらけです。

ちょっときれいにしようと頑張ったけどカッターではなかなか厳しかった。
彫刻刀とかあれば違うかも。そしてノミとゲンノウが最強かも。

穴ができたらノリで固めてみます。
出勤前に作業していたため最後まで見届けられず
どのくらいで固まったのかはよくわかりませんが、2時間もあれば固まりそうな気配でした。

トータルの作業時間は、ノリが乾くまでを含めて4時間くらいとなりそうな見通しです。
ノリが乾くまでに他の本を切ったりできることを考えると
4時間で1冊しか作れないわけではないでしょうが、
これを一つのサンプルとしていろいろ考えてみることにしましょう。

考えてみる

さて、試しに作ってみたので、これをもとに何ができそうか考えてみます。

役立つ場面と流通について

まずシークレットブックを使う場面を考えます。
基本的に想定されるのは以下のようなパターンでしょうか。
1.後ろ暗い人が表向きばれないように塀の中の世界に差し入れする 
2.自宅の本棚にこっそり並べる等して貴重品を隠す

1についてはフィクションの作品でしかしらないので、実態は不明です。
塀の上を歩くような商売はできるだけ避ける方が無難かと思いますが、
ニーズはありそうで、金払いも良いのかもしれません。
でも一般のお客さんより揉める率が高そうでやっぱり避けたいです。

2については、空き巣対策としての防犯面での需要がありそうです。
目立たなくさせるように(木を隠すなら森という発想で)使うならば、
浮かないような装丁であることも重要でしょう。
今回試したような専門的なものだと自宅の本棚に並んでて自然な人は少ないでしょう。
それを考えると、作れるラインナップから想定する顧客は、
まず勤務先の人やその同業者となりそうです。

もし販売店になってもらう会社を探すなら
家庭用セキュリティ用品を扱ってるようなところに相談したいものだけど、
現状では手間がかかりすぎて大量生産できないし難しそう。
個人で売るなら、メルカリとかで販売するか、
サイトと申し込みフォームを作ればスモールビジネスをはじめられるかもしれません。
売値の肌感覚としては800〜1000円くらいが最大値な気がしますが、
4時間かかって1000円でも、他の仕事探した方が良いのでは…。

改善を検討したい点について

自他ともに認める不器用さなので、
今のクオリティで商品として売り出すのは微妙です。
その他の点も含めて、解消した方が良い点についてもメモしておくことにします。

蔵書印などを消したい

図書館の資料には、持ち主を示す蔵書印や地印が押されているので、できれば消したい。
用途からすると別に支障はないけど、商品から職場バレするメリットはありません。
標題紙に押した蔵書印はページごと切りとれるけど、地印の処理がちょっと難しい。
業務で砂消しとか使ったことあるけど、しんどい割にあまり消えません。
古本屋で使ってるような研磨機はどうなんだろうか…?

材料の安定供給について

職場の資料を廃棄する権限を持ってしまっているため、
あらぬ嫌疑を持たれないような慎重さも必要です。
廃棄資料の選定基準を満たすことは当然として、
できれば廃棄資料選定、実行プロセスに関与しないで材料を集めたいものです。 

そういえば、
値段がつかない本はどこへ行くのか https://ideasforgood.jp/2023/12/21/valuebooks_circularyokohama/ 
という記事がありました。 

再生紙にならず本のまま流れ着く先もあるようです。
真面目に事業としての成立を狙うなら、
本をもらうなり買うなりを持ちかけるというアプローチぐらいやってもバチは当たらないのかもしれないですね。

競合について

昔100均だかで本の装丁みたいなデザインの小箱を見ました。
コストを考えたら本型の箱を作るのが、一番安く早くニーズを満たせそうです。
カバー付きの古本を100円で買ってきて、適当な箱に付け替えても良さそうです。

そんなものと競合するくらいなら、
顧客に図書を選んでもらってオーダーメイドで穴を開けるスタイルにした方が、
ニーズにはあわせやすそうだし、商売としても採算があいやすいかもしれない。

今のところ他に同じようなことを考えている人はいなさそうですが、
図書館が組織の事業として参入したら一瞬で自分のアドバンテージがなくなりそうです。
コツはいるし、わざわざやろうとするけったいな人間はそう多くないでしょうけど。

作業の効率化について

最初のうちは定規をあててカッターで切っていましたが、
深さを増すごとに四つ角の部分が切りにくくなります。
断面をきれいにするためには彫刻刀かノミが良さそうでした。
全体的にけっこう力がいるのも大変なポイント。

できるなら、万力とかで固定して、
穴あけパンチのように上から押しただけでいい感じの形にくりぬいたりできると、
大幅に時間短縮できそうです。うーむ、できるのか?
可能なら大きさも判型に合わせて可変だとより良さそうだけども、
いまいち妙案が思いつきません。
暇をもてあましたときにホームセンターに行って考えてみたいところです。
 

おわりに

タイトルに【夏休み自由課題】と書きましたが、
この記事は書くのに3か月くらい時間がかかっています。
いろいろ忙しく、なかなか書けませんでした。
本務の仕事が増え続けていることもあり、
残業代より高い収益が見込めないと損だよなあ…と思いながら書きました。悲しい。

売り物にしなくても、このテーマでワークショップとかやったら
図書館のイベントとしては面白そうですが、
公共図書館だと史料のアーカイブ機能が求められていたり、
文学作品が多めだったりして、単純には手を出しにくいでしょう。
けしからん、という投書もくることでしょう。

ただ、書き込みや破損で廃棄せざるをえなくなった資料はあるでしょうから、
「汚破損の実情を知ってもらう」「修理の仕方も少し学べる」「地域の防犯意識の向上につながる」などを建前としてワークショップを実施し、
完成品を参加者に持って帰ってもらうことで廃棄の手間も減らそう、
という方向なら実現可能かもしれません。とりあえずSDGsってつけておけばなんとかなる。

残念ながら公共図書館員じゃないので私自身でそこまでやれませんが、
どこかでやっている図書館もあるんでしょうか? とても気になるところですね。

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自己紹介

自分の写真
ある日突然図書館司書資格関係の科目を教えることになり、司書と司書教諭の必要科目の大半を担当していました。次に図書館関連の道具を販売したり建築・改築をする仕事に転職し、図書館の機械化部門で図書館システムやらIC関係の仕事をしました。現在は大学図書館の司書(大学病院図書室、電子資料契約、RDM等の担当)として勤務。 ブログは教員のころに始めたものなので、当時からするとコンセプトは大きくずれているけど、まあよしでしょう。 博士(図書館情報学)。

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